分類学とは
グラン博士ゼミナール「分類学」

分類はすべての研究の土台作り

グラン博士

地球上の動物は、名前のついていない誰も見つけていないようなものも含めて、推定780万種、そのうち210万種が海にいると言われておる。水陸いずれも、背骨を持っているものを「脊椎動物」と呼び、これには我々ヒトを含む哺乳類や魚も含まれる。一方、背骨を持っていないもの、貝やイカの仲間、エビやカニの仲間などは、すべて「無脊椎動物」と呼ぶ。じつは地球上で知られている動物のほとんどが無脊椎動物なのじゃ。

 これらの多様な生物を、体のつくりや発生様式、ときには類縁関係も加味して体系的に分けて整理する学問が分類学じゃ。たとえば買い物でスーパーに行ったとき、鶏肉を買うときはお肉売り場、キャベツを買うときは野菜売り場に行くじゃろ?それと同じように、近いものをまとめて整理することで、多様な生物を理解しやすくするのじゃ。これを行うのが分類学者なのじゃが、もちろん一人では全生物の分類はできない。そこで、「カニの分類学者」や「ヒトデの分類学者」といったように、分類学者はみんな、それぞれ自分が専門とするグループをある程度しぼっておる。

生物の分類体系

図:生物の分類体系(イメージ)


分類学者の仕事として、一番わかりやすいのは、新種を見つけて名前をつけることじゃ。しかし実際にはそれだけではなく、これまでの体系的なグループを今の知見、今の技術を使ってもう一度整理し直すことも分類学者の仕事なのじゃ。例えば200年前の顕微鏡で見たら脚に何も生えていないように見えた生き物が、現代の電子顕微鏡で見たら棘や毛が生えている事がわかり、より細かく分類することができるようになったりする。その時代の使うツールによっても、分類学で扱う種の境界線は変わったりするわけじゃ。これを常に調べて情報を更新していくことも、分類学者の大切な仕事のひとつじゃよ。

 分類学や学名は、科学においてとっても重要なものじゃよ。科学は再現性が求められるので、他の人が同じようにやって同じ結果が得られる事が重要じゃ。例えばある人が「種Aを扱って実験をしたら、こういう結果になりました」と報告した後、別の人が「種Aで同じ実験をしたのに、同じ結果になりませんでした」と言ったら、「その実験結果、本当に正しかったの?」となるじゃろ? この時もしも、後から実験した人が「種A」と呼んでいたものが、実は「種A」ではなく「種B」だったら、「種A」で実験したことが再現されていなかったことになる。つまり、きちんと分類されていないと、科学の根底を揺るがすことにもなりかねないわけじゃ。きちんと分類をして名前をつけることが、全ての研究の土台を作ることになるのじゃよ。