研究題目コケムシを用いた震災履歴の探索と付着生物群集の生態学

調査地大槌

テーマ番号(各班の番号)2

研究実施者(氏名・所属)広瀬雅人・白井厚太朗・河村知彦(東京大学大気海洋研究所)

キーワード固着生物,生物群集,コケムシ,成長,多様性,震災履歴

研究内容(目的・方法)
大槌湾口部の水深90 m地点には、サンゴのような形をした大型の起立性コケムシが集まった群集の存在が震災前後にわたって確認されています。このような固着生物群集は、多くの小型生物によって生息場として利用されていると考えられます。本研究では、浅海域から深海域への移行帯の固着生物群集にみられる震災の影響を明らかにすることを目的として、震災後に採集されたコケムシ群体の炭素・酸素同位体比分析を行っています。これまでの分析の結果、コケムシの枝の断面にみられる筋状の模様が酸素同位体比の周期的変動と一致していることが明らかとなり、この筋を基準として枝の年齢を推定できる可能性が示唆されています。今後はさらに詳細な分析を行うことで、震災前後のコケムシ群体の成長率を比較していきたいと考えています。また、ROVを用いてコケムシ群集に棲息する底生生物を採集することにより、これらの固着生物群集が生物の多様性に果たす生態学的役割についても明らかにしていく予定です。

参考文献

  • Hirose, M. (2016) Diversity and distribution of adeonid bryozoans (Cheilostomata: Adeonidae) in Japanese waters. European Journal of Taxonomy, 203: 1–41.
  • 広瀬雅人(2014) 触手冠動物の分類学ーコケムシの多様な形態と生物学を記載するータクサ日本動物分類学会誌, 37, 1-13.